同じ蔵が醸す「酵母」違いの純米酒の飲み比べ
46億年前に誕生したといわれる地球は、その後、多くの生命を育みました。私たち人類が誕生した20万年前よりも遙かな昔。約10億年前には、発酵食品を作り出す酵母や麹カビの祖先が誕生し、さまざまな種類へと進化し、私たちの食を支えてきました。その中のひとつが、日本酒を醸す上で欠かせない「清酒酵母」です。
日本酒造りに使われる「清酒酵母」には、他の酒造に使われる酵母と比較して3つの大きな特徴があります。
- 低い温度でも増殖・発酵ができ、アルコールの生産力が高い。
- 酸の生成が少ない(ワイン酵母の1/4〜1/3程度で、繊細で上品な口当たりになる)
- 日本酒独特の香気成分となるエステル(リンゴやバナナの香りが代表的)等をたくさん生成する。
これらの特徴が日本酒ならではの香りや味わいを生み、そしてそれは各蔵の個性にも繋がっていきます。
日本酒造りに使われる「清酒酵母」
日本酒造りでは、長い間、酒蔵の中で自然に変異した酵母を使っていましたが、明治以降、個性的で優れた酒を生み出す酵母を選りすぐり、分離・純粋培養したものを使用しています。あるものは蔵元から分離し、あるものはそれらの酵母をもとに変異させたり交配して開発されたものです。その代表が「きょうかい酵母」と呼ばれ「日本醸造協会」から全国の蔵元に頒布されています。また、各県の研究機関や大学などで独自に開発された酵母もあり、現在では百種類を超える多種多様な「清酒酵母」が使われています。
「清酒酵母」はそれぞれに特徴を持ち、酵母ごとに異なる香りの成分や酸味成分を作り出し、お酒の風味に大きく関与します。各蔵元は、そうした様々なタイプの「清酒酵母」を使い分け、酒造りの手法を駆使し、酒蔵の姿勢や風土を映した個性あふれる多彩な日本酒を造り出しているのです。
今回の頒布会では、同じ蔵元の「酵母」違いの純米酒を "飲み比べ" ていただきます。各蔵元が、気候・仕込水・原料米・杜氏など同じ条件で、異なる2つの「清酒酵母」それぞれの特徴を最大限に引き出した2つの純米酒。いずれも夏にふさわしい美味しさに仕上げた頒布会オリジナル酒です。「酵母」が違えばこうも香味は変わるのか、という日本酒の奥深さ・面白さをお楽しみください。
お酒の栞「酒談義」
お酒と一緒に、蔵元にまつわる物語を記したしおり「酒談義」をお届けします。この頒布会でしか楽しめない各蔵元の個性あふれる酵母違いのお酒の味を楽しみながら、「どんなところで、どんな人たちが、どうやって」そのお酒を生み出したのかと思いを巡らせて、お楽しみください。