お酒の歳時記
2005. 11
 ◆今月の肴◆ 朴歯味噌を楽しむお酒
秋から冬にかけての寒いシーズンには
味噌料理が恋しくなってきますが、
酒肴に一度は登場させたいのが朴歯味噌。
今回は牡蠣を載せた一品と、
料理もお酒も互いに引き立たたせるお酒を、
渋谷・酒菜亭の高塚さんに伺いました。
(取材協力/酒菜亭
冷やで楽しむ
お燗で楽しむ


牡蠣の朴歯味噌焼き
牡蠣の朴歯焼き before 牡蠣の朴歯焼き after
肉でも野菜でもキノコでも、何をのせても美味な飛騨高山の名料理・朴歯味噌。最近、朴歯とお味噌はネットでもお取り寄せできますが、ここで使われているお味噌はもちろん酒菜亭さんオリジナル。ちょっと甘めに仕立ててあります。その上に、はじけそうなほどぷっくら膨らんだ牡蠣、エノキ、ネギ、松の実を載せて。お味噌がプンと香り立ち、くつくつ煮立ってきたら、豪快にかきまぜ、牡蠣があまり固くならないうちに食しましょう。鮮度良く、かつ生食もできる牡蠣を使うのがポイント。半生状態の牡蠣は香りよく、焦げた香りも香ばしい少し甘めのお味噌の奥から抜け出て、トロリとした旨みが口いっぱいに広がります。海のミルクとも言われる牡蠣を食べれば、忙しさがヒートアップしてくるこれからのシーズンも乗り切れるかも。

さて、これに合うお酒ですが……

 ●冷やで楽しむ 真澄「純米吟醸 山廃造り」山廃潤米吟醸●
真澄 純米吟醸山廃造り
【参考価格(税込)】
1.8L・3,045円
720ml・1,523円
「お味噌系には山廃純米のように味や酸のしっかりしたお酒が合います。あまりすっきりしたお酒だとお味噌に負けてしまうので」とはママの高塚正子さん。

 おすすめいただいたのは、真澄の「山廃純米吟醸」。山廃仕込みで醸し、20ヵ月じっくり熟成させて、秋口に出てくる完熟酒です。透明感のある美しさと、ほのかに香る心地よい吟醸香、骨太なボディ、トロリとした口当たりでキレ味もよし、非常に均整のとれたお酒。うっとりするほどきれいな酒質でありながら、味噌の強力な味に負けないほどの力強さを持っています。

 朴歯味噌と合わせて飲むと、牡蠣や味噌の香味の良い部分をぐっと前面に押し出してくれます。単品で飲めば心地よい吟醸香を楽しめて、かつ料理と出会うとぐっと控えて料理を支える名脇役となるーー名優です。

 ●お燗で楽しむ 賀茂泉「緑泉本仕込み」純米吟醸●
賀茂泉 緑泉本仕込み
【参考価格(税込)】
1.8L・2,751円
 「真澄のこのお酒はお燗にしてもいいと思いますよ。山廃のきれいな酸が消えてしまわないように、ぬる燗がいいでしょうね。あとお燗にするなら、牡蠣の名産地広島のお酒はいかが」。
と、次におすすめいただいたのが賀茂泉の純米吟醸「緑泉 本仕込み」。

 「炭素濾過をしていない山吹色をしたお酒で、冷やだと主張が強い感じがしますが、お燗をつけると非常になだらかないい感じになります。秋の夜長に燗でも、というときに最高のお酒ですね」。

 お燗のつけ具合はぬる燗より少々高めの42度。白い器に注がれたお酒は山吹色をして、お米由来のふっくらいい香りが漂ってきます。口にすれば、甘やかで柔らかく、複雑にからみあう旨みの交響曲。これが牡蠣のミルキーさや味噌の甘やかさと相まって、身をとろりとゆだねたくなるいいコンビネーションを見せます。秋の夜の幸せとはこういうものか……としみじみ感じられる、お燗好きなら一度は試していただきたい旨さです。

 
カテゴリに戻る | カテゴリの一覧に戻る