お酒の歳時記
2004. 09
 ◆今月の肴◆ 〈ひやおろし〉に合う料理
秋に美味しい〈ひやおろし〉は
数々の秋の味覚と好相性ですが、中でも
パーフェクト! と思わず叫んでしまった
酒と肴の組み合わせをご紹介。
(取材協力/岡永倶楽部)
鮭ハラスの漬け焼き▼
 ●鮭ハラスの漬け焼き
     
VS. 美しき熟成感「飛良泉 山廃純米ひやおろし」
鮭ハラスの鮭漬け焼き
【参考小売価格(税込)】
1.8L・2,730円
720ml・1,418円
サンマもいいけれど、秋鮭もね、というわけで脂がノリノリの鮭のハラスの焼き物をご紹介。ただ焼いても美味ですが、ここでいただいたのは“鮭の魚醤”に漬け込んでこんがり焼き上げた一品。脂はとろ?りとろとろ、赤身には魚醤の旨みがしっかり染み込み、そして皮は香ばしくパリパリと。大根おろしと一緒に食べてなお美味しく、一品で3回美味しい好肴です。

「旨みがマッチし、酸のキレが油をきってくれますよ」と、店長におすすめいただいたお酒は、飛良泉の「山廃純米 ひやおろし」。

 まずは一口。濃ゆい旨みと秋風のように透き通った味わいに、「一年ぶりのご無沙汰」と、再会の喜びがわきあがってきます。

 それにしても、この蔵元さんの造られる山廃は、ほんとうに酸が美しい。水晶のような美しさ。それが高音域で美しい旋律をかなで、低温域にはほどよい熟成感のある複雑な旨みがボリューム感たっぷりに響きわたるーー濃厚な旨みとキレの合わさった妙なる調べにウットリしてしまいます。

 単体でもインパクトたっぷりですが、料理が傍にくると相手を立てる名脇役に変身。寄り添い底支えし絡み合う、見事なセッションを見せてくれます。

 鮭のハラスにちょいとお醤油をたらした大根おろしをのせて口に入れて、このお酒を一口。すると頭がトロけて「もう、どうにでもして」状態に。

 熟成したチーズの濃厚さと通じる「濃ゆさ」を持っている鮭のハラスですが、焼けた皮の香ばしさが鼻をくすぐり、トロントロンの脂が舌の上で溶け、そこに大根おろしがさっぱり感を加味、さらにお酒が「濃ゆさ」に負けない質の旨みで迎え撃ち、きれいな酸がクドさをすっきり断つ。……なんとも官能的な組み合わせ。

 秋の味覚の喜びにおぼれて、身も心もとろとろになってしまいます。


村越店長のTIPS:
「山廃は乳酸を多く含むので、脂のコクとマッチするんです。あまり冷やしすぎないでお楽しみください。次第に温度をあげていく飲み方もおすすめです。時間がたつと料理は冷めて油がクドく感じられてきますが、そのときに山廃にお燗をつけると、キレがまして両者ともに美味しくいただけますよ」。


 
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