お酒の歳時記
2004. 07
 ◆今月の肴◆ 夏の生酒に合う料理

いよいよ夏本番! 冷房病に夏バテに、
弱った体を元気にするのはまず食事から。
美味しいお酒と料理で
暑さに立ち向かいましょう。
さわやかさが魅力の〈夏の生酒〉ですが、
味わいのタイプもバリエーションにとんでいて、
料理に合わせてセレクトする楽しさもあります。
(取材協力/岡永倶楽部)

穴子の磯部揚げ▼
ままけは入り卵焼き▼
 ●穴子の磯辺揚げ
     
VS. さらりと爽やか「白馬錦 雪中埋蔵」
【参考小売価格(税込)】
720ml・1,575円

 暑くなるとウナギにハモにアナゴに、ニョロニョロ長い滋養豊富な魚がなぜか恋しくなりますが、今回はアナゴの磯辺揚げをご紹介。

 身を開いたアナゴを一口大に切り分け、生海苔を入れた衣ダネにくぐらせて、カラリと揚げればできあがり。塩とレモンでいただきます。口に入れると鮮烈な潮の香りが広がり、その後ろからホコホコととろけるアナゴの風味が追いかけてきて、夏の海模様が口いっぱいに展開されて至福。

 合わせたお酒は、白馬錦の純米吟醸生酒「雪中埋蔵」。「名前の通り、今年1月に搾ったお酒を雪の中に埋めて約4ヶ月間、熟成させたお酒です。さっぱりしているので、飲み疲れしませんよ」とは村越店長。ほのかに香る吟醸香もゆかしく、雪をいただく北アルプスの山々が脳裏に浮かぶよう。胸が開かれるようなすがすがしい味わいが広がるお酒です。

 磯辺揚げと一緒にいただくと、海苔の香りに負けてしまうかと思っていた吟醸香が、逆に、グッと鮮やかに浮き出てくるから不思議です。香りに限らず味わいの輪郭もくっきり立体的に。アナゴの旨みも前面に押し出され、さらに揚げ物の油もフレッシュな生酒がさらっと洗ってくれて、さわやか度がさらにアップ。食をすすめ夏の元気を取り戻してくれる組み合わせです。


 ●ままけは入り卵焼き
     
VS. 発泡性にごり「信濃錦 スパークリング大自然」
【参考小売価格(税込)】
720ml・1,523円
300ml・662円

 「ままけは」とは「飯喰は」。山形地方の方言で「ごはんを食べなさい」というような言葉で、名前のとおり、ひと舐めすれば、いくらでもごはんが進む青唐辛子の麹漬けです。それをダシ巻き卵に包んだ一品をご紹介。

 シンプルな卵料理は使う卵の鮮度や質に仕上がりの味わいが大きく左右されるので、美味しい卵を選びましょう。だし汁を造るのが面倒であれば、市販のだしつゆを加えてもOK。ふつうにだし巻き卵を焼く途中で、ままけはを落として巻き込むように焼いていきます。ぴりりとした辛みを、濃厚な卵の旨みが包み込んで、一見やさしげな風体をしていながら、パワフルな味わい。ピリリとした味噌様の唐辛子が、食欲も増進してくれます。

 「合わせるなら、まろみがあってしっとりしたタイプのお酒が合いますね」。という店長のレクチャーに従って、ご登場いただいた〈夏の生酒〉は、信濃錦の発泡性にごり酒「スパークリング大自然」。

 封を開けるときは一気に開けず、カシっと空気が入る程度の半開きでいったんストップしてください。底に沈んだ濃厚なオリが、炭酸の泡と一緒に舞い上がり、まるで逆「スノー・ドーム」状態の、美しい様を楽しめます。お米の名残りのツブツブ入りの濃厚さなのに、口当たりはすっきりさわやか、透明感のある清冽な味わいがやみつきになるにごり酒です。

 さて、これを卵焼きと一緒に口にすると、お酒が唐辛子の辛みをおだめ、卵の甘みを引き出してくれる一方で、お酒の炭酸の刺激を濃厚な卵が丸く包み込んでくれる好相性。この組み合わせはどこか懐かしい。そう、たとえるならば運動会のお弁当の黄金コンビ、卵焼き&おにぎりのカップリング。ほっと深呼吸できる美味しさです。

 
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