浦霞 (株) 佐浦

(宮城県塩竈市)

佐浦 弘一 社長

松島湾を抱く塩釜に280余年、享保9年(1724年)に奥州一ノ宮である塩竃神社の御神酒酒屋として酒を醸したのが「浦霞」蔵元の始まり。「東北の吟醸といえば浦霞」と言われるものを築き上げた昭和の大杜氏・平野佐五郎氏の伝統の技を受け継ぎ、地米にこだわり「本物の酒を丁寧に造って、丁寧に売る」をモットーに、食中酒として魅力的なバランスのとれた飲み飽きしない酒を造り続けています。

10年をふりかえって

(株)佐浦 佐浦弘一 社長

震災発生時、私は地元ローカル線の車内で想像を超えた大きな揺れに遭遇しました。電車を降りてタクシーを拾い本社へ戻りましたが、これまでにない土蔵の壁の大きな崩落や母屋内の家具等の倒壊状況を見て胸のつぶれる思いがしました。

避難所で寒さと不安で眠れぬ夜を過ごした翌日、津波が引いた後の悪夢のような被害状況をあらためて見た時には、今後どうなるのだろうかと暗澹たる気持ちになりましたが、何としても会社を存続させ、酒造りの伝統を次の世代に伝えるための歩みを止めてはならないという強い思いで、社員たちとともに復旧作業に取り組みました。

国内外から届いた応援が前に進む原動力に

その過程においては、日本名門酒会の加盟店様やお客様をはじめ国内外の皆様からいただいた数多くの心温まるメッセージやご支援、応援消費の盛り上がりにより勇気づけられ、それが前へ進む原動力となりました。また建物の耐震補強などこれまでの経験に裏付けされた災害への備えが功を奏して、機械・設備の故障はあったものの建物の倒壊は免れたこともあり、私は自社の完全復旧に希望と確信を持つことができました。

人と人をつなぐ日本酒 「浦霞発、日本酒のチカラ」

弊社では2011年4月より「地域の復興なしには自社の真の復興はない」という考えに基づき、売上げの一部を積み立てて地域の食文化の復興、地域の未来を担う子供たちの教育・育成に関わる支援等につなげる「浦霞発、日本酒のチカラ」プロジェクトを実施しています。

日本酒を通して皆さんのご支援を被災地域の復興につなぐことができ、多くの感謝と笑顔をいただきました。このようなことができるのも、地域の歴史や風土に育まれ、人と人をつなぐ役割を持った日本酒だからこそと感じています。

今もまたコロナ禍により当たり前の日常が大きく変わってしまいましたが、いつの時代も「想定外」はあるもの。常に備えを心がけ、何があっても再び起き上がって美味しい酒造りに取り組んで参る所存です。あらためて皆様からいただいている「日本酒の絆」に心から感謝申し上げます。

2021.02