第3回
8月
うらかすみ じゅんまいぎんじょう《うらかすみこうぼ しこみ》
[宮城県塩釜市]
720ml 瓶貯蔵
近年では、独自の酵母を開発する蔵元も増えてきました。その先駆者ともいえるのが『浦霞』の「浦霞酵母」です。昭和20年代の終わり頃から、30年代、40年代と全国新酒鑑評会を席巻し、『浦霞』を東北屈指の銘醸蔵へと育て上げた不世出の名杜氏・平野佐五郎氏(南部杜氏)が吟醸づくりに用いていた酵母が、この酵母の原株です。その優秀さから昭和40年代には「宮城酵母」として県内に普及し、昭和60年には「きょうかい12号酵母」にもなりましたが、保存中に変質したと言われています。現在、蔵元ではこの酵母をもとに、より優れた酵母を分離して使用しています。
初期の頃の「浦霞酵母」は、バナナのような高い香りが特徴でしたが、数奇な運命を辿りました。その改良型ともいえる現在の「浦霞酵母」は、穏やかなメロンやイチゴ様の香りに、ほんのりと完熟リンゴを思わせる果実香が漂うリッチな芳香です。この酵母を使い今回お届けする純米吟醸酒では、雑味がなく旨味を感じさせ、まとまりのよい濃密さをお楽しみいただけます。
蔵元について 創業/享保9年(1724年)
松島湾に面した塩釜市は、奥州一ノ宮である塩竈神社の門前町として栄えてきました。享保9年(1724年)に仙台藩の命を受けて以来、塩竈神社の御神酒を醸し続けてきたのが『浦霞』です。酒銘は、源実朝の詠んだ歌「塩竈の浦の松風霞むなり八十島かけて春や立つらん」に由来しています。