[速醸モト・生モト・山廃モト]
[(そくじょうもと)・(きもと)・(やまはいもと)]
 酵母を大量に培養するために造られる「酒母」あるいは「モト(酉ヘンに元)」。このモトを造るときにポイントとなるのが、雑菌に弱い酵母をガードしてくれる乳酸です。この乳酸の由来によって「速醸系モト」と「生モト系モト」にわかれます。


速醸モト

 酒母を造るとき、麹・掛米・水のほかに、市販の純度の高い醸造乳酸を加えます。明治43年に考案され、安定した品質のモトを造ることができるため、現在、広く使われています。淡麗型のお酒になります。


生モト

 乳酸が自然の乳酸菌から生まれてるのを待つ、昔ながらの方法。 室町時代から受け継がれてきた方法で、半切り桶という平べったい桶に、麹、蒸し米、水を加え、櫂棒ですりつぶす「モト擦り」を行います。

 ここでは硝酸還元菌や乳酸菌など微生物が入れ替わり立ち替わり増殖・絶滅していき、最後に酵母だけが生きられる乳酸の海の中で、酵母が爆発的に増殖します。

 速醸モトが2週間ほどでできあがるのに比べ、生モトの完成には30日近くを要します。温度管理などコントロールが難しく、高度な酒造りの技が必要とされます。各種の微生物が作り出す複雑な香味が加わって、濃醇でコシの強いお酒になります。


山廃モト

 生モト系モトの一種です。麹と蒸し米を櫂ですりつぶす「モト擦り」(「山卸(やまおろし))が行われますが、麹の酵素が米を溶かす事実がわかり、とても重労働であったこの作業を省略したものです。「山卸」を「廃止」したので「山廃」という次第。

 現在では生モト系のモトは、「山廃」が多くを占めるようになっています。やはり濃醇型のお酒になります。



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