日本名門酒会 蔵元紹介

蔵の概要

環境

環境

酒造りが行われている冬の蔵

灘と並び二大銘醸地と賞されてきた京・伏見。“伏水”とも記されるほど水の豊かなこの街は、京の都の南玄関口として古くからの歴史を刻みます。豊臣秀吉が伏見桃山城を築城してからは城下町として発展、江戸時代には京阪を結ぶ淀川の水運の拠点として繁栄しました。伏見における酒造りが飛躍的に発展したのは明治時代以後。桃山丘陵からの良質な醸造用水が豊富にあったこと、伏見港へ入る石炭を酒造用熱源として利用できたこと、あわせて東海道本線の敷設により鉄道輸送を使って全国へ出荷できたこと、と条件が揃う中、伏見の蔵元のたゆまぬ努力の成果もあって基礎を築き、戦後の高度成長期に灘と並ぶ日本の銘醸地となりました。蔵は清流・高瀬川のほとりにあり、八角赤レンガの煙突が聳え、美しい自然に溶け込むようにして建つ大正11年築の木造蔵は、伏見のランドマーク的な存在にもなっています。


歴史

歴史

大正期、大黒蔵の建造風景

蔵は寛政3年(1791年)、京都の洛中東山伏見街道にて創業。以来、京文化に育まれた京の酒屋として、幕末・明治維新の激動の歴史を乗り越え、大正11年(1922年)に名水を求めて現在の地に移転。6,000坪の広大な敷地を買い求め、翌大正12年に竣工された大黒蔵三棟(1306平方メートル)は、今も現役で活躍しています。この蔵は現存する木造の仕込み蔵としては日本国内最大級と言われ、昭和58年に第一回京都市美観風致賞を受賞、平成12年に京都市産業遺産に認定され、平成19年には経済産業省の近代化産業遺産に伏見の代表として認定されています。こうした美しさに対する感性が、美味しい酒を造り続ける駆動力として今も守り継がれています。現代の名工に選ばれた前杜氏・石井松治氏の工夫を取り入れた手作業の勘を伝達する設備環境整備など、先人の叡智に学び次世代へと繋げる努力にも余念がありません。代表銘柄「桃の滴」は伏見・西岸寺で任口上人の徳に一滴でもあやかりたいと松尾芭蕉が詠んだ句「我衣にふしみの桃の雫せよ」に由来します。


造り

造り

酒米を手洗いする

酒造りの基本は「一麹、二もと、三造り」と言われますが、蔵元では「一蒸、二蒸、三造り」と考え、とにかく外硬内軟の良い蒸米を作ることが良い酒造りの原則であると、50数年間、先代杜氏より守り継がれています。そのためには質の高い酒造好適米の使用が何より優先され、現地農家と契約し調達される良質な酒米を使用。純米吟醸『桃の滴』は富山県産《五百万石》を、純米大吟醸『桃の滴』は兵庫県産《山田錦》の特等・一等のみで仕込まれます。「原料に勝る技術なし」を実践し、米の品種や産地のもたらす上品な美味しさを引き出すことを最優先。桃山丘陵から敷地内の井戸に湧き出る中硬水の伏流水を仕込み水に、京の造り酒屋としての美意識が生きる酒を醸しています。


味わい&合う料理

食

湯豆腐。水のきれいなところに旨い豆腐あり。

飲み飽きせず皆に好かれる淡麗な旨口酒がモットー。 原料にも技術にもこだわったからこその上品な後口は、繊細な京料理にもぴったりです。

蔵元おすすめ酒に合う地元のうまいもん

松本酒造の酒の味わいはどの酒も全て米の持つ美味しさと麹や酵母が醸しだす「うま味」を優先し、「淡麗辛口」とは対極の方向ですから、仏教文化の影響を強く感じる豆腐湯葉、そして京野菜を使った料理が良く合います。中でも湯豆腐は特にお薦めです。また、松本家では糸引き納豆を煮た黄金納豆が秘伝の酒肴として代々守り継がれています。